サッカー(ヴェルディ)以外の日常を綴ります。
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Fri
2012.03.16
14:34
 
あの川のほとりで上

あの川のほとりで下


ニューハンプシャーの山奥。
林業の町に暮らすシェフの父とその息子にある悲劇が起こる。
寝室から漏れ伝わるただならぬ声。
少年は、
父親が熊に襲われていると思い込み、
何者かを伝説のフライパンで撲殺してしまう。
それはなんと熊ではなく父親の愛人だった。
しかも厄介な事に愛人の恋人は悪徳治安であり…。
この瞬間から父子の半世紀に渡る逃避行が始まる。
繰り返される暴力や、
不条理な戦争、
衰退していく文化などを辛らつに綴る一方で、
家族とは仲間とは何かを改めて問うハートフルな大作。
個人的には、
いちアーヴィングのファンとして大いなる期待を持って読ませていただいた。
ただある意味、
同氏らしい場所と時代が複雑に交差するプロットには、
なかなかすんなり読み進める事が出来ず苦労した。
それでも終盤に差し掛かるにつれて、
どんどんと盛り上がっていく興奮を存分に味わえた。
そして気づけばアーヴィングの世界にどっぷりとハマッっている自分に気づくのである。


今回の物語のテーマは、
避けられない悲劇。
冒頭、
不慮の事故で命を落とした少年から語られるのだが、
これが全体を通した不安を予見するようで不気味だ。
そう。
はっきり言って、
のっけから暗い!
そしてそんな雰囲気の中で、
父子を長い逃避行へと誘う事故へと繋がっていくのだ。
かつてシェフである父親が熊退治に使用したとされるフライパンで、
純粋で早熟な幼い息子は、
父の愛人を撲殺してしまう。
一見滑稽にも思える事故が、
常に断ち切れない不安として存在しえるのは、
彼らを追う悪徳治安官の存在であろう。
いつまでも父子を追い続ける治安官の執着心は狂気を孕んでおり、
父が各地でシェフとして成功しようが、
息子が成人して人気作家にまで登りつめようが、
その影が消える事はない。
これこそアーヴィングの言う、
「事故が起こりがちな世の中。」である。
物語の中には、
その他多くの悲劇が折り重なる様に悲劇が介在する。
繰り返されてしまう暴力。
避けられない別れ。
ひとりでに進んでしまう残酷な戦争やテロ。
そいった避けられない悲劇の中で、
人間はどう生き続けどう未来を見つけるか。
父子を通して、
様々な環境化でも泥臭く生き抜く人間の力強さに魅せられてしまった。


悲劇が語られる中、
もうひとつのテーマとして大切に綴られていたのが、
家族や仲間の存在である。
本書では実に個性的なキャラクターが多数登場する。
気まぐれな天使レディ・スカイ。
かつての愛人を思い起こさす未亡人。
力強く心優しくエロティックな大女。
小心者でストリップ好きな高校教師。
臭い放屁をする犬や、
ベトナム戦争に兵士を送り出さないように自らが犠牲になる少女、
そして豪快で大雑把で心優しい樵のケッチャム。
特に樵のケッチャムは、
父子を凌ぐほどの存在感がある。
読み書きすら出来なかった樵は、
昔ながらの林業を愛し、
アメリカ合衆国のやり口を嫌う。
周囲と溶け込む事が出来ず次第に時代から取り残されていくのであるが、
いつだって父子の行く末を案じている。
まるで父子を守りぬく事が、
自分の使命といった具合に…。
次第に明かされる樵のケッチャムの過去は、
実に衝撃的である。
ケッチャムについて語った彼の恋人シックスパックの言葉に印象的な一文がある。

「失いたくないものはいつも持たずにすませるっていうのが、
あたしの人生哲学だった -ケッチャムは別として」


ケッチャムと、
その周りの人達の絆が垣間見える一文である。
作家になった息子も、
その"ケッチャムは別として"という部分に感銘を受けるのだが、
必ずや読者も共感する事であろう。
やはり悲劇的な運命に溺れながらも信念を貫き通す樵の姿は、
不安と折り合うヒントを示してくれる。
"ケッチャムは別として"。
物語を象徴する、
本当に素晴らしい言葉だ。

物語の構成は、
前述の通り複雑だ。
さまざまなエピソードが時代を越えて交差する。
ハッキリ言えば、
決して読みやすい代物ではない。
アーヴィングファンならまだしも。
それと、
要所要所で政治的な主観が介在しているのも、
少しだけ気が折れた。
特にベトナム戦争の映像を見ながら嘔吐する日本人の場面があるのだが、
これは不快だった。
日本人の尊厳に関わる問題だけに。
そこら辺を我慢すれば、
絶対に満足の一冊だ。
後世に残る名作になると確信している。
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