サッカー(ヴェルディ)以外の日常を綴ります。
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Fri
2012.02.10
16:13
 
解錠師


幼少期の惨事を機に、
話す事を捨てた主人公の少年マイクル。
彼に出来ることは、
絵を描くことと
閉ざされた錠を外すこと、
それとたった一人の恋人アメリアを愛することだった。
物語は、
投獄された主人公が、
半生を打ち明けていく形態。
金庫破りになるまでの少年期と、
プロの金庫破りとして犯罪に手を染めていく話が交互に語られる。
決して話す事をしない青年の、
心に閉ざされた闇が解かれる日は来るのか。
MWA・CWAの両賞の他、
バリー賞最優秀長篇賞や全米図書館協会アレックス賞をも受賞した話題作。


けっして動かないよう考え抜かれた金属の部品の数々。
でも、
力加減さえ間違えなければ、
すべてが正しい位置に並んだ瞬間に、
ドアは開く。
そのとき、
ついにその錠が開いたとき、
どんな気分か想像できるかい?

マイクルが読者にそんな事を話しかける一文がある。
解錠に対する芸術的な一面を巧みに表した言葉だ。
やはりこの本で一番の魅せ場は、
金庫を破るシーンにある。
錠を開けるだけの作業が、
こんなにエキサイティングだとは思わなかった。
まだプロの金庫破りになる前の“素人時代”から、
それぞれが個性的な犯罪者達と共に巨大な金庫を攻略するシーンまで、
まさに手に汗握る場面の連続!
時に官能的とも言える表現は、
激しいアクションシーンにも負けない臨場感があった。
これだけでも読む価値がある作品だ。

そしてもうひとつ。
作品の肝となるのは、
主人公の悲しい運命と、
それを必死に抵抗する姿だ。
幼少期のある悲しすぎる出来事により、
主人公は声を発する事が出来なくなってしまった。
そして悲しい運命が、
マイクルを徐々に混沌へと誘っていく。
彼の心の声と裏腹に、
現実は冷酷かつ情け容赦ない。
貧困と犯罪というアメリカ社会が抱える問題を鋭く描いているのも本作の特徴だ。
物語には終始犯罪者が登場する。
その在り方も実に様々で、
とても重厚な人間味が表現されいる。
後半から残酷なシーンも多く、
非常に切ない気持ちになるのだが、
救いようのない社会の中で生き抜く、
それぞれの人間の姿には、
強い感銘を受けた。

マイクルが人間として正常な心を取り留めている理由。
それこそ、
物語の中で一貫して語られる唯一の恋人、
アメリアという女性の存在だ。
愛する人と一緒にいたいという一心が、
彼を幾度となく罪への後悔を生む。
ところがマイクルは、
最初に鍵を開けて不法侵入した家で彼女を知った。
犯罪を犯さなければ会えなかった相手というのも奇妙な縁だ。
彼女と愛を深めていくシーンは、
主に絵を介して話される。
マイクルのもうひとつの才能である絵を描くことが、
どのように最後影響したかは、
是非読んで確認して欲しい。

さて、
ちょっと意地悪な事をいうと、
アメリカの貧困と犯罪というベタなテーマは、
本当の意味で日本人の共感を得られにくい。
昨今では日本でも格差社会が叫ばれているのだが、
アメリカ社会におけるソレとは性質が異なると感じた。
それはどこか対岸の火事の様にも映るし、
リアルとして心に刻まれたかと言えば、
日本人の僕には響かない部分もあったのは隠しようない。
だけど、
全体を通してはエキサイティングであるし、
青春文学として美しく丁寧な恋愛が描かれていた。
問題提起の矛先が日本人とはズレていたとは言え、
文学的な完成度は不変だ。
間違いなく傑作であるという事はハッキリと言いたい。
それと非常に分かりやすいので、
翻訳本(洋書)に馴れない方も安心して読めるはず。
翻訳者のセンスも感じられる。
という訳で、
自信を持ってお勧めしたい一冊だ。


さて。
また次の本で。
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